名古屋大学医学部附属病院が、指定難病である特発性拡張型心筋症に対する新たな治療法を開発し、2027年度の実用化を目指して治験を予定しています。
特発性拡張型心筋症について
特発性拡張型心筋症は、心臓が徐々に大きくなり、心不全が進行する難病です。令和3年度末時点で、中等度以上の心不全症状がある国の難病指定患者数は18,724人に上ります。末期心不全の場合、心臓移植が唯一の根本的治療法ですが、ドナー不足により年間約80名程度しか適応されていないのが現状です。
新たな治療法
名古屋大学が開発した新治療法は、「テイラーメイド方式心臓形状矯正ネット」と呼ばれるものです。これは、患者個々のCTやMRIの心臓画像と心臓状態から、心機能を最適化するように設計されたメッシュ状の袋で、心不全悪化の最大要因である進行性心拡大(心臓リモデリング)を防止する医療機器です。
治験の進捗状況
2023年6月に第1例目の治験が実施されました。高度の肺高血圧や機能的僧帽弁閉鎖不全を伴う症例でしたが、ネット装着直後から僧帽弁閉鎖不全が軽度にまで改善し、肺動脈圧も正常化しました。手術は約1時間で終了し、術後の回復も順調でした。先行して実施された特定臨床研究3例では、術後2年から3.5年が経過し、運動耐容能の改善が得られ、患者は活動的な日常生活を維持していたとのこと。
今後のスケジュール
- 令和6年度中(2024年度):探索的治験完了
- その後:フォローアップの観察研究継続、検証的治験への移行
- 令和9年度(2027年度):実用化目標
この新治療法は、特に機能的僧帽弁閉鎖不全を伴う重症心不全患者のQOLと生命予後を改善する可能性があります。名古屋大学を中心とした全国5大学(名古屋大学、東京大学、東北大学、慈恵会医科大学、大阪大学)での多施設共同治験により、この革新的な治療法の実用化が期待されています
出典:https://www.med.nagoya-u.ac.jp/hospital/news/press-release/2023/08/28113049.html