本の創薬力強化を目指す政府の戦略目標と工程表が明らかになりました。欧米で承認された医薬品が日本で利用できない「ドラッグロス」の解消に向け、2026年度までに必要性の高い薬の臨床試験を開始し、2028年までに創薬を担うスタートアップを10社以上誕生させることが柱となっています。30日には、産学官の関係者を集めた創薬関連サミットが首相官邸で開催され、この計画が公表される予定です。
資料等は、下記の参照URLでは、現時点で併載されていませんが、今後、詳細が掲載されると思います。

内閣府・首相官邸・健康・医療戦略室

第9回 グローバルヘルス戦略推進協議会

厚生労働省の現状

厚生労働省によれば、欧米で承認されているが日本では開発が行われていない薬は、2023年3月時点でがんや難病の分野などで86品目に上ります。そのうち、子ども用の薬が4割近い32品目を占めています。

工程表の具体的な内容

2024年夏から5年間の工程表では、ドラッグロスが生じている86品目のうち、必要性の高い薬について、2026年度までに臨床試験を開始する目標を掲げています。特に深刻な子ども用の薬では、2028年度までの5年間で開発計画を50件策定します。承認申請に関わる要件の緩和を進めることで、製薬会社に開発を促し、国民に最新の薬を迅速に届けることを目指します。

創薬力強化のポイント

新薬の開発では、近年、米国を中心に新興企業が中核的な役割を担うようになっています。日本では、こうした企業の育成が進んでおらず、企業価値100億円以上の新興企業を2028年までに10社以上生み出す目標を打ち出しています。また、国際共同治験に日本が参加できていないことが多いため、届け出件数を現状の1.5倍の年間150件に拡大することも計画に含まれています。2025年度には、外資系の製薬会社やベンチャーキャピタルが参加する官民協議会を発足させ、海外から日本への積極的な投資や研究拠点の開設につなげる予定です。

政府の動き

 岸田文雄首相は、首相官邸で開いた「創薬エコシステムサミット」で、「日本を世界の人々に貢献できる創薬の地にしていく」と連呼し、「医薬品産業を成長産業、基幹産業と位置づけ、民間のさらなる投資を呼び込み、体制・基盤の整備に必要な予算を確保し、政府を挙げて創薬力構想会議の提言を具体的に進めていく」と意欲を滲ませている。
また、創薬力強化に向け、国内で国際共同治験の初回治験計画届件数を2021年の100件から28年には150件に増やす目標を打ち出した。創薬シーズから第I相試験に入る段階であるFIH試験実施体制を整備し、整備された施設での国内FIH試験実施件数を23年度の0件から29年度には10件に増やす。一方、ドラッグラグ・ロス対策では海外で承認され、国内で開発未着手となっている医薬品86品目のうち必要な医薬品は26年度までに開発へ着手するよう企業やアカデミアを支援するとしている。

国としては、第II相試験以降の「シーズを育てる」体制には課題が多い中、この計画が順調に進み、安全が担保された、最新の希少疾患の治療薬が、いち早く患者の手元に届くことを期待しているとのこと。

FIH試験:第I相臨床試験の中でも、動物試験で安全性と有効性が確認された後、ヒトに初めて投与する段階の治験を、「ファースト・イン・ヒューマン(First in human:FIH)試験」と呼びます。

国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院 治験・臨床研究とは

参照

読売新聞オンライン 2024/07/30 より

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