東京慈恵会医科大学小児科学講座の今川英里特任講師と大石公彦講座担当教授らの研究チームが、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)および米国マウントサイナイ医科大学の研究グループとの国際共同研究により、核酸医薬スプライシング制御オリゴヌクレオチド(SSO)を活用した遺伝性疾患シトリン欠損症に対する新たな治療法の開発に成功しました。
研究の背景と成果
シトリン欠損症は日本人に高頻度で発症する遺伝性疾患で、SLC25A13遺伝子の変異が原因となっています。この疾患は尿素サイクル異常症の一つに分類されます。
研究チームはさらに、尿素サイクル異常症の8疾患(OTC欠損症、NAGS欠損症、CPS1欠損症、シトルリン血症1型、ASL欠損症、高アルギニン血症、HHH症候群、シトリン欠損症)の原因となる遺伝子に対し、深部イントロン変異を効率よく検出する遺伝子パネル「Prune」の開発にも成功しました。
研究の意義と今後の展望
この研究成果により、従来の検出法では見逃されていた尿素サイクル異常症の原因遺伝子変異を発見できるようになりました。また、これまで肝移植のみが根治的治療であったシトリン欠損症に対して、より低侵襲で有効性の高い新規治療法の実現が期待されています。
本研究の成果は2025年2月18日付でJournal of Hepatology誌に掲載されました。この新たな治療アプローチは、遺伝性疾患に対する根本的な治療法の開発に向けた重要な一歩となるでしょう。